◆友禅染め
友禅染めは、国際語として通用する色彩的で華麗な日本の染物の代名詞として考えて よいでしょう。 友禅染めの中でも手がき友禅(本友禅、無線友禅)型友禅に別れていて、用語によって 美しく格調高い模様に染められています。 友禅染めの名は、江戸時代の画工宮崎友禅斉が始めたためですが、手法はもち米で作った 防染のりを用いた精巧なものに本来の特徴があります。
◆手がき友禅
振り袖や留め袖、訪問着や加工着尺のような礼装や盛装着物に用いています。
◆本友禅
糸目友禅といわれるもので、もちのりで防染した格調の高い、古典的なものです。
◆無線友禅
もちのり防染をせず、染料で直接に絵模様を描くものです。
◆型友禅
着尺地、羽裏、じゅばんなど多方面に用いられます。 そして複数的に数多く染めます。 なお、着尺地は小紋の名で呼ばれていつのが実情です。
◆小紋
小紋は、本来、小さい模様を布地いっぱいに単色で型染めした、おしゃれな着物ですが 現在の小紋は文用の大小や色彩の多少にかかわらず、型染めの着尺地はすべて 小紋といいます。 小紋は江戸で発達した渋くて、繊細なもので京友禅(多彩で文様も大きい型染め)に 対比されて、その特徴がはっきりと区別されています。 しかし、現在の小紋は型友禅と実際的には同じもので区別することは、無意味です。 そのため伝統的な小紋は江戸小紋と呼ばれています。 江戸小紋のの特徴やその発達をうながしたものに、武士の裃に各藩が定めた小紋を作って 文様や染めの技術を競ったため極度に繊細精緻なものとなり、技術的のもすばらしく 洗練されたものとなったのです。
◆紅型
紅型は、沖縄でできる多彩華麗な型染めです。 その色彩は、顔料(大豆で作った接着剤を用いて捺染する)を 用いますのでボリューム感があります。 紅は、沖縄語で色彩全体を意味するといわれますが、亜熱帯の海の色や空の色に対応する 配色はほかのどんな染め物にも見られない、独特の強烈で鮮明な美しさがあります。 非常に色彩的でありますが、型紙は一枚だけ用いて、配色はすべて小はけを使って丹念に 色ざしをします。 文様のモチーフは、友禅に共通するものも多く、たとえば雪のない沖縄に雪持笹のような ものがあって、友禅染めと交流があったことが、うかがわれます。 現在、沖縄以外の静岡、東京で本格的な紅型が製作されています。
◆更紗
更紗は、もめん地に色彩的な美しい文様を染めあげたものです。 更紗には種類が多く、インド更紗、ジャワ更紗などが代表的なものとして知られています。 技術もインドのブロックプリント(文様を彫刻した木板で捺染する)ジャワのバチックろう染め) そのほか手がきのものも多くあります。 更紗には、皿紗、佐羅紗、華布、印華布などと呼ばれ、安土・桃山時代に南蛮船によって 舶載されたものです。 戦前は多方面にわたって、大量に需要がありましたが、現在は縮緬に染めことさら古びを つけた色調のものを、上代更紗などと呼び、高級型染めの着物として流行しています。 文様や色調に、どことなくエキゾチックな味があり、それが一種の魅力を作り出しています。
◆ろう染め
ろう染めも絞り染めと同様に古くからある染色技術で、奈良の正倉院にあるろうけちや ジャワのバチックなどと同じものです。 ろう(昔は木ろうが用いられていましたが、現在は木ろうのほかにパラフィンろうが多く 用いられています)を道具を用いて、防染し文様の色染めをするという素ぼくな染めものです。 わが国では、友禅染めという精巧な文様染めを作る、もちのりの防染法が始められるように なり、ろう染めは長い間忘れられた存在になりました。 大正のころ、正倉院のろうけちの復元が考えられるようになり、友禅染めの精細な技巧的な もののほか、ろう染め素ぼくな染め味が見直されるようになりました。 現在は渋好みの訪問着や街着、おしゃれ着などに愛用されています。
◆絞り染め
絞り染めは、非常に古い時代から行われてきた素ぼくで幼稚な染色技術です。 布地の一部を堅く縛って染液の中に浸すと、縛った部分に染料が浸透しないまま、 その部分が文様となって現れます。 友禅や小紋のような精巧な染めの技術が、開発される以前の染めものです。 しかし、かのこ絞りなどは、絞ることに極度に手間をかけ、一枚の着物や羽織に数ヶ月かかる ものも珍しくありません。 絞り染めは、布地に凸凹ができて、ボリュームがあり、絞ったあとにできる染めのにじみに、 ほかの染めに現れないやわらかな美しさが、表現されます。 絞り染めにはいろいろな種類がありますが、疋田絞り、蜘蛛絞り、縫い絞り、鹿子絞りなどが あります。
◆板締め
文様を、彫刻した二枚の板の中に、布地をはさんで、染液に浸して文様を染めるので この名前があり、古くは正倉院に収蔵されているきょうけちに代表されます。 最近はほとんど見られなくなりましたが、東京都下村村山大島紬のかすり糸は、この板締め の技術を持って作られています。
◆版染め
木材、リノリューム、芋などに文様を彫刻して、それに染料をつけて押捺したものを総称して 版染めといいます。 版の代わりに木の葉などを用いることもあります。チーク材の木口に文様を彫って押捺する。 インドにブロックプリントが代表的なものです。 着物には木版を応用したものがまれに見られる程度です。
◆墨流し染め
水に布苔などを混ぜた、比重の重い水液をバットの中に満たし、(樹脂性の染料を用いて 色彩的な染めも作られます)を落とし、これを棒でかき回して一種の不規則で、複雑な曲線 文様を作り、その上に布地を浮かせて、写し取って染めるものです。
◆長板中形
江戸中形ともいいます。中形用のもめん地一反を長い捺染板の表裏に、張り伸ばし、中形用 の型紙にのりを置き(布地の表裏両面に同じ型をつけるので、高度の技術が必要とします) かわいたち本藍の藍ガメに数回浸して、染め上げます。 現在は少量生産しかされていません。